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国内最高峰「第107回日本陸上競技選手権大会」 北海道ハイテクACチームが果敢にチャレンジしました

いいスタートを切り1台目のハードルを越える高橋選手

 陸上の国内最高峰「第107回日本陸上競技選手権大会」が6月1日(木)から4日(日)の4日間、台風影響下の大阪・長居のヤンマースタジアム長居で開催され、滋慶学園グループの北海道ハイテクACに所属する高橋佑輔選手(札幌市役所)が男子110mHに、島田雪菜選手(北央電設株式会社)が女子100mにそれぞれ出場しました。女子100mHの村岡柊有選手は故障のため欠場しました。

 メンバーはいずれもフルタイムで働きながら、陸上を続ける“社会人アスリート”。十分な練習時間が取れない中、両選手は共に決勝には進めませんでした。昨年の同大会で4位入賞し今大会に賭けてきた高橋選手は予選3組に出場。強豪がひしめく中、後半タイミングがかみ合わないながらも13秒88をマークしましたが、結果は4位と、あとわずかのところで決勝進出を逃しました。後半に強い島田選手もスピードに乗れず、予選4組7位の12秒21でした。

 北海道ハイテクACの正垣雅規代表兼監督は「来年の日本選手権にもチャレンジできるよう、今シーズンの残りの試合に全力を傾けて欲しい」と今後の活躍に期待を込めていました。

世界選手権やアジア選手権への出場がかかった大会

 今大会は「第39回U20日本陸上競技選手権大会」と「ブダペスト2023世界陸上競技選手権大会」「バンコク2023アジア陸上競技選手権大会」「杭州2022アジア競技大会」の各日本代表選手選考競技会を兼ねて開催されました。

  • IMG_2346 会場

    ヤンマースタジアム長居の会場入り口の様子

  • IMG_2447 チーム

    高橋選手と島田選手、高田先生と込山先生

 日本陸上競技選手権大会への出場は、前年の優勝者か資格記録を上回り、直近の地域選手権大会で3位までに入るなどの厳しい条件をクリアしなければなりません。出場資格記録は男子110mHが13秒95、女子100mが11秒8。フルタイム勤務の社会人アスリートにとって、日本中のトップアスリートが集結する本大会に出場できること自体、大変なことです。

 大会にはトレーナーで北海道文教大学教授(理学療法学)の髙田雄一先生と、アスレティックトレーナーの公認資格と鍼灸師・あん摩マッサージ師の資格を持つ東京メディカル・スポーツ専門学校の込山明先生もチームに帯同しました。

【男子110mH】

「最後までかみ合いませんでした」 悔しそうに一言だけ漏らした高橋選手

 線状降水帯が襲った前日とは打って変わって、好天に恵まれた大会3日目、高橋選手は午後4時45分から始まった110mHの予選2組に出場。号砲と共に第6レーンの高山峻野選手(ゼンリン)の隣の第5レーンからダッシュ、リアクションタイム0.142と2番目に速い反応でスタートしました。「このままいけば、2着圏内は確実か」と思ったのもつかの間、中盤から後半にかけて、いつもの伸びがありません。結果は13秒88の4着で決勝進出は叶いませんでした。

 「最後までかみ合いませんでした…」。レース直後、一言、こう言い残して、練習グラウンドになっているサブグラウンドに向かった高橋選手。ひとりになりたかったのでしょう。サブグラウンドでは、いつものようにクールダウンのランニングをするでもなし、ただただ、ゆっくりゆっくりグラウンドの外周を歩いていくだけです。悔しさを懸命に抑え込もうとしているのでしょう。時折、天を仰ぎます。かける言葉が見当たりませんでした。

  • IMG_2363 高橋選手紹介

    選手紹介に応える高橋選手

  • IMG_2409 高橋選手中盤

    中盤、懸命に前の選手を追う高橋選手

  • IMG_2440 高橋選手ひとり

    レース終了後、サブグラウンドをゆっくりと歩く高橋選手

4月に異動 大きなイベント準備に追われる中での出場

 この4月、高橋選手に大きな変化がありました。札幌市役所の区役所勤務から本庁勤務に異動したのです。所属する局も仕事も変わりました。新しい職場に慣れる間もなく、コロナ明けの6月に新しい勤務先のセクションが関わる一大市民イベントや、各種イベントなどの開催準備に追われる毎日でした。そんな中、バタバタと梅雨の大阪入りし試合に臨んだのでした。

IMG_2442 高橋選手と高田先生高橋選手と高田先生

 しかも今シーズンは、わずかな練習時間を使って、自分一人でフォームの改善やハードリングの技術の改良に取り組んで、試合前には、「今日は調子がいいです」と話していた高橋選手。チームのトレーナーで北海道文教大学 医療保健科学部教授(理学療法学)の髙田雄一先生も自ら撮影した映像やデータ解析から「彼の走りは少しずつですがよくなっていますし、それを自身でも実感しています。きっと結果を出してくれると思います」と、期待を込めました。

 しかし、心の在り様に比べて、身体は思った以上に疲れていたのでしょう。高さ1m067の10台ものハードルを絶妙のタイミングで飛び越えながら疾走する難しい競技。本人は「言い訳にしかならないので」と何も話しませんが、微妙に思うように身体をコントロールできなかった、さらに言えば、大勝負を前にした高揚感の中で本人が感じる感覚とは違って、もっと深いところで疲労が蓄積していたのではないかと思うのです。落ち着いたら本人に聞いてみたいと思います。

【女子100m】

「ワクワクします。楽しんできます」とレースに臨んだ島田選手

 2020年の日本選手権陸上に出場して以来3年ぶりに出場資格を獲得して日本最高の舞台に立った北海道ハイテクノロジー専門学校卒業生の島田雪菜選手(北央建設株式会社)。「ワクワクします。日本選手権は特別感があって大好きです、楽しんできます」。明るく笑顔を浮かべながらこう言って、大会初日の6月1日(木)午後2時20分から始まる100m予選の4組に向かいました。
 
 メインスタンド側第9レーンからの出走です。選手紹介に大きく手を振ってこたえたあと、一斉にスタート。「スタートは今年のレースでは一番良かったと思います」。レース後にこう振りかえった島田選手のリアクションタイムは0.181。4番目の速さですが勢いがありました。その勢いで中盤に突入していきましたが、やや身体を起こすのが早かったか、後半の加速に持って行けませんでした。結果は7位、タイムは12秒21。楽天的な面もある島田選手ですが、レース後、予選敗退に「腰と胸が反ってしまって…」と、イメージ通りに一直線の前傾姿勢が取れなかったことを悔しがりました。

  • IMG_2267 島田選手紹介

    選手紹介を受ける島田選手。大型ヴィジョンに映し出されました

  • IMG_2274 島田選手スタート

    スタートは良かった島田選手(左端第9レーン)

 3年ぶりに出場が叶った日本選手権に向けて、昨冬、仕事が終わると学校と職場の後輩の吉田明香里選手とともに、連日、雪道をクルマを飛ばしてと恵庭のインドアスタジアムに通いました。目指すは心肺機能のアップと体力アップなど基礎能力の向上。繰り返し繰り返しやってきたことで自信もありました。

「スタートから中盤までは悪くはなかったのですが、タイムは悲惨でした!イメージしてきたことが、まだ無意識にできる段階になっていなかったということですね」。まだまだ練習がたりなかったとちょっぴり悔し気な表情を見せました。

  • IMG_2294 島田選手中盤

    力走する島田選手

  • IMG_2313 島田選手ゴール

    ゴールに飛び込む島田選手

お父さんや会社の応援を受けて嬉しそうでした

 この日、会場のヤンマースタジアム長居には、福井から車で駆けつけたお父さんの姿もあり、「スタートは良かったので、後半もう少し頑張ってくれればよかったのですが」と晴れ舞台での愛娘の姿に目を細めておられました。また、北海道の会社では、同僚や後輩から上司までLIVE映像で応援してくれていたのか、温かく送り出してくれた職場に結果を報告すると、「見ていたよ、いいスタートだったよ」「カッコよかったよ」とあちらこちらから声が飛んできました、と嬉しそう。

 フルタイムのOLとアスリートという二股生活。けっこうきついはずですが、「仕事も走りも楽しいです!」と11秒69の自己記録を持つ島田選手は、日本選手権の決勝の舞台に再び立てる日を夢見て、引き続き課題に挑戦できることが嬉しそうでした。

次に向かって頑張ります

 高橋選手も島田選手も、すぐに立ち直り、「次の大会に向けて頑張ります!」と気持ちを切り替えていました。

北海道ハイテクAC/Web広報センター)