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全国の海で広がる「磯焼け」 解決の糸口みつける再生プロジェクトが始まりました! 大阪ECO動物海洋専門学校

磯焼けの原因といわれるガンガゼウニを駆除する学生

 地球温暖化による海の水温上昇や食害生物のせいで海藻が激減し、砂漠のようになる「磯焼け」が、全国的に深刻化しています。大阪ECO動物海洋専門学校の環境分野でホームフィールドになっている、三重県志摩市の間崎島の海も例外ではありません。磯焼けの問題解決の糸口をみつけるべく、ドルフィントレーナー専攻のダイビングゼミ生たちによる海の再生プロジェクトが間崎島で始まりました。

 まずは、間崎島の磯焼けの一番の原因と思われるガンガゼウニの駆除です。このガンガゼウニは、ムラサキウニに比べると味は今一つで、毒のある長い棘があり漁獲されないことや、天敵がいないことなどから増殖。増えすぎたガンガゼウニによって海藻が食い荒らされるのです。

 学生たちは、磯焼けやガンガゼウニについて、知識としては知っていましたが、実際に磯焼けした海の中を見て、驚きの声を上げました。海中に海藻は全くなく、黒く長い棘を不気味にゆらゆらと動かすガンガゼウニが、恐怖を感じるほど大量に密集していました。

 学生たちは、ガンガゼウニを一つ一つ潰して駆除していきます。素潜りで行うため息が続かず、思うように作業が進みません。それでも根気強く、むしろ夢中で作業を行なってくれました。

  • 密集するガンガゼウニ

  • 多様性が失われた磯焼けの海底

ガンガゼウニに付加価値を持たせる!?

 しかし、作業後に学生は「駆除作業が今回限りだと分かっているから頑張れたけど、これを続ける自信はない」とはっきりと言いました。ギクっとしました。磯焼け問題の本質はこれだと分かっていたからです。

 一口にガンガゼウニの駆除と言っても、その海に強い思い入れや大きなメリットがないと、とても続けられるような易しい作業ではないのです。

 ではどうすれば、持続的に駆除活動を行なっていけるのか。そのアイディアの一つとして獲ったガンガゼウニを食べてみました!見た目はお寿司屋さんで見るウニそのもの。でも味は…。ムラサキウニやバフンウニなどには及ばないかもしれませんが、加工方法によっては可能性を感じる味でした。

  • ④ガンガゼウニの生殖巣を観察

  • ウニ丼にして食べてみるが、ちょっと苦い…

 ガンガゼウニ自体に付加価値を持たすことが出来れば、漁業として漁獲されるようになるかもしれません。そんな可能性も考えていきたいものです。

人工海藻の設置で生き物の“隠れ家”に

 さて、続いて行なったのが人工海藻の設置です。漁業用ロープのメーカー、TBR株式会社の「イカニモ」という商品を使用し、イカの産卵床になることを目指し、沿岸の2箇所に設置しました。

 人工海藻の設置は、磯焼けの直接的な解決にはならないのですが、間崎島の海に海藻が戻ってくるまでの間に、イカはもちろん、その他の生き物の“隠れ家”になればいいな、との思いでこのような設置方法を試してみました。設置方法もそれほど難しくないため、いずれ良い結果が出れば増設も検討します。

 この2つの作業を実際に自分たちの手で行うことで、この先「間崎島のガンガゼウニは減ったかな。イカは産卵しに来たかな」と、学生たちの脳裏をよぎることでしょう。

  • 人工海藻イカニモを設置

  • 色んな生き物の“棲み家”になりますように!

 磯焼けだけでなく、全ての環境問題は「無関心」から始まります。今回のように体験・体感し、その土地や海に想いを馳せることが、無関心でなくなる強力な第一歩なのだと感じました。

 磯焼けやその他の環境問題も一朝一夕で解決することではありませんが、小さな一歩を踏み出すことを大切に、若い力を巻き込んで今後も取り組んでいきたいと思います。

  • 海に想いを馳せることが環境問題の解決の第一歩

大阪ECO動物海洋専門学校 教務部 高見真依)