お知らせ
News
滋慶医療科学大学院大学の学位授与式 2期生16名の医療安全管理学修士が誕生
2014.03.28
「医療の質・安全」を研究する日本初の大学院である滋慶医療科学大学院大学(大阪市淀川区)の「平成25年度学位記授与式」が3月23日(日)、新大阪駅前の大学院学舎で行われました。武田裕学長から2期生の医療管理学研究科 医療安全管理学専攻の池田誠さん(47)らに学位が授与され、新たに16名の「医療安全管理学修士」が誕生しました。
この日修士号を授与された16名は、34歳から64歳までの男性8名と女性8名。医師や看護師、臨床検査技師、臨床工学技士、理学療法士、鍼灸師、診療情報管理士、心理療法士、医薬品メーカーの会社員と様々な職業に就きながら、平日の夜と土曜日に、医療事故防止やリスクマネジメント、チーム医療に対応する職種間連携や医学、工学、建築、経営管理学等の学際分野について学んできました。さらに各自のテーマについての研究を行い、論文をまとめあげて、2月15日、16日の厳しい最終論文審査をクリアしてこの日を迎えました。
武田学長が式辞「新しい医療文化を共に創っていこう」
大阪大学名誉教授でもある医学博士の武田学長は「今、ヘルスケア、医療、福祉、介護等々は非常に厳しい状況におかれています。大きな病院の院長が頭を下げるような事態も起こっています。それだけ複雑であり、力のいる分野であります。
今まではタテ型の医療であり、多くの安全上の問題はタテとヨコとのコミュニケーションの問題にありました。ヨコのチーム医療をどのように実践するかという教育の方法論が課題となっています。
我々はこの3月16日には新しい研究会『医療安全実践教育研究会』をこの大学院で作りました。そこの問題を解決していくことがこの大学院の使命だと立ち上げたものです。今後、皆さんと共に新しい医療の文化をつくって行きたいと思っています。
医療安全管理学修士を取れるのは日本でこの大学院大学だけです。どうか自信と気概を持って現場をコーディネーションし、リーダーシップを発揮して我々や先輩と共にぜひ新しいヘルスケアの世界を作っていっていただきたい」と激励しました。
浮舟総長「医療安全のネットワークの中心的存在として活躍を」
理事長でもある滋慶学園グループの浮舟邦彦総長は「仕事をしながら研究を進めるこの2年間は本当に大変だったと思います。医療は益々高度化、専門化しており、そういう中で医療の質と安全が問われています。同時に成長ジャンルとして位置づけられ、人材的にも期待されているところです。
医療事故の調査に関する法制化も進められており、皆様の専門は注目を浴びるとともに、益々必要とされてまいります。施設内と共に地域社会における医療の質と安全、チーム医療としてのネットワークがそれぞれ重要になってきます。
医療安全管理学修士をとられた皆さんが、これらのネットワークの中心的存在として活躍していただければと思います。また『医療安全実践教育研究会』にも顔を出していただき、研究を継続する一方、先生方との交流も深めていただきたい。このジャンルの先駆者としてどんどん研究成果を世に問うて行っていただきたいと願っています」と祝辞を述べました。
内藤国立循環器病研究センター病院長と李同済大学医学院院長補佐が祝辞
各界から来賓を代表して国立循環器病研究センター病院の内藤博昭病院長と中国・同済大学医学院の李覚院長補佐が祝辞を述べました。病院長になる前は医療安全の責任者だったという内藤病院長は何事も先陣を切ることの大変さを紹介したうえで「安全安心のベースの考え方はほぼ定着してきました。あとは戦略と戦術です。戦略・戦術を練りそれをどう展開して広めていくか、それが出来るのは皆さんだと思います。力は十分だと思うので、これに大きく関わることが日本の今世紀の医療を良くする道だと思います。ご活躍をお祈りしています」と祝辞をのべられました。
また李院長補佐は「大阪滋慶学園とは1999年から医学情報、生命科学の領域で合弁教育を行なってきました。大阪滋慶のリハビリの先生に同済大学の付属病院の指導にも来ていただいています。今後、学術文化の交流を通じてさらに大きな成果を期待しています。本日は皆様方が日本で初めての素晴らしい医療安全管理学の大学院を修了されることをお慶びいたします」とお祝いを述べられました。
-
国立循環器病研究センター病院の
内藤病院長 -
中国・同済大学の李院長補佐
-
新修士を代表して謝辞を述べる天本さん
祝電披露のあと、最後に看護師として働きながら学んできた医療管理学研究科医療安全管理学専攻、天本都さんが修了生を代表して「大学院の授業はどれも新鮮であると同時に、自分自身の勉強不足を感じるものでした。次から次へ課題として出されるグループワークは時間の調整が大変でしたが、身をもって多職種連携の域を肌で感じることができました。時には人間関係が怪しくなるような意見の衝突もありましたが、グループの中で解決することができ、今後の医療安全活動の原点になるのではと感じています。この大学院での学びを少しでも社会に還元することが先生方や支えてくださった皆様方への恩返しだと思っています」と謝辞を述べました。
総代は大阪ハイテク専門学校卒業のジョンソン・エンド・ジョンソンの元会社員、池田さん
この日の学位記授与式の総代に選ばれたのは医療管理学研究科医療安全管理学専攻、池田誠さん(47)。
池田さんは1989年に新大阪にある大阪ハイテクノロジー専門学校のバイオサイエンス学科(現生命工学技術科バイオサイエンス専攻)2期生として、2年課程を卒業後に医薬品メーカーに就職。その後、別の医薬品や医療機器を扱う会社に勤めた後、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社で約10年間、セールスやマーケティング、セールス・マネージャーとして病院などを相手にバリバリ働いてきました。
「いかに得意先に安心・安全を届けるか」。20年を超える会社員生活の中で、仕事を通じて池田さんが日々頭を悩ませ、苦労してきたテーマでした。ちょうどジョンソン・エンド・ジョンソンでの勤務が10年目を迎えた時、何か新しいことに挑戦したいという気持ちが沸々と湧いてきていました。そんな時、母校のグループ校として滋慶医療科学大学院大学が設立され「医療の質と安全」の研究を行なえることを知ったのでした。
当時の恩師などにも相談した所、2年制の専門学校の卒業生も社会経験を積んでいれば進学できることを知った池田さんは思い切って転進を決断。見事、修士課程への関門を突破し合格することが出来ました。新たな世界へのキャリアアップのチャンスでした。全精力で研究に打ち込みたいと決意した池田さんはきっぱりと会社を辞め、学業に励んできました。
池田さんが取り組んだテーマは「軟性内視鏡の再生処理に関する研究」。構造が複雑で洗浄が難しいといわれる胃カメラをいかに完璧にきれいにするかがテーマで、まずその汚れのメカニズムの解明に取り組みました。その結果、脂質が汚れに関わっているとの仮説を立てるまでに至り、胃カメラ内の複雑な内部構造体を模擬作製してその検証を繰り返し、98ページの論文にまとめあげました。
その優れた着眼点の研究が指導教官に認められ、昨年11月上旬には、トルコで58カ国の医師や検査技師らが集まって行なわれた「滅菌供給業務世界会議」に日本の研究者とともにポスター発表者として参加。さらに11月下旬に東京で行なわれた「医療の質・安全学会」でも各大学・大学院の教授や医師、研究者らに交じって、「軟性内視鏡内腔洗浄における用手的予備洗浄の評価用デバイスの作成とその評価」の演題で口演発表を行いました。
仕事を投げ打って新しいキャリアに挑戦し、この日、医療安全管理学の修士号を手にした池田さんは式に出ていた恩師である大阪ハイテクノロジー専門学校事務局次長の大須賀先生と抱き合って大喜び。今後は大阪大学医学部付属病院の研究生として引き続き研究を続けるという池田さんは「とてもワクワクするような2年間でした。胃カメラの洗浄については、世界中が注目しています。メカニズムを明らかにしたあとは、解決策を提案して行きたい」と世界の医療界で活躍する夢を語っていました。