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中之島クロス 滋慶中之島センターがオープン! 滋慶医療科学大学大学院 未来医療の推進・人材育成を進める

 先端医療の研究と高度人材の育成を目指す、滋慶医療科学大学大学院の教育・研究開発センター(滋慶中之島センター)が、未来医療国際拠点「中之島クロス」にオープン。7月20日(土)に開所式が行われました。大学・研究機関や中之島クロスのテナント企業、滋慶学園グループの教職員ら約130人が出席。センターは学校法人 大阪滋慶学園が設置した施設で、未来医療・再生医療の研究を推進するとともに、学生の研究指導や中学・高校生向けの啓蒙プログラムを企画するなど、人材育成につとめていきます。

 滋慶中之島センターは大学院に所属し、中之島クロスのビル15階に開設。実験エリア(約330平方メートル)には実験室、細胞培養室、クリーンルーム、暗室、低温室などが設置されています。必要な研究機器は多数備えてあり、生命科学の幅広い研究と実習が行える環境です。事務エリア(約330平方メートル)には、約50人が収容できるセミナールームも併設されています。

「未来医療に向け研究活動、情報発信、人材育成を」 浮舟邦彦理事長

 式典では大阪滋慶学園の浮舟邦彦理事長(滋慶学園グループ総長)が挨拶しました。最初に1987年に開校した大阪ハイテクノロジー専門学校では、当初から生命工学技術科(現在のバイオ・再生医療学科)を設置しており、これまで約2300人の卒業生をバイオテクニシャンとして業界に送り出していることを紹介。滋慶学園グループの姉妹校、東京バイオテクノロジー専門学校でも4000人近い卒業生を輩出している、と述べました。

 「中之島クロスは再生医療・創薬・医療機器・AI(人工知能)・ゲノム医療等の未来医療、産業創出の拠点となります。また中之島は大阪大学医学部誕生の地。大阪の医療・文化の中心でもあり、日本を代表する研究施設になっていくと思います」と期待感を示し、「大阪滋慶学園では大学・大学院をベースとした教育・研究開発センターとして研究活動、情報発信、人材育成を進めていく拠点となる施設をここに開設することといたしました」と語りました。

 とくに教育面に言及し、「今後、一般向けのセミナーや専門学校の学生、あるいは高校の生徒・教員向けのバイオ・再生医療等の講座、小・中学校の児童・生徒を対象にした啓発セミナーを開催し、未来の人材育成を担っていければと考えている次第です」と述べました。

「社会のための科学 三位一体となり健康と安全を希求」 千原國宏学長

 滋慶医療科学大学の千原國宏学長は、中之島にあった大阪大学医学部で1964年に大阪大学基礎工学部を受験したことをはじめ、阪大時代の節目節目の思い出を振り返りつつ、「その60年後、縁あって滋慶中之島センターの開所式を行うことは法外の喜び」と語り、大学の現状と展望について説明しました。

 大学は2011年に日本で唯一の医療安全管理学の修士課程を持つ滋慶医療科学大学院大学(現在の滋慶医療科学大学大学院)として開学。これまで237名の修士を輩出していること、2021年には“生命のエンジニア”といわれる臨床工学技士を育成する医療科学部臨床工学科を新設したことを紹介しました。

 今後について、「中之島クロスに開設された本センターは、2031年に開通予定の『なにわ筋線』でJR新大阪と中之島が繋がり、滋慶医療科学大学の新大阪キャンパスと一体化した運用が可能になります。センターの教授陣は、再生医療を中核とする未来医療の安全管理に関する大学院教育と研究に従事し、未来医療デザインにかかわる人材育成プログラムを準備しています」と説明。さらに“社会のための科学”の重要性について言及し、「医療科学部・大学院医療管理学研究科・中之島センターが三位一体となって、人々の健康と安全を希求する本学の目的を達成するため邁進します」と語りました。

記念講演で未来医療の成果披露 大阪大学の関口清俊先生・金田安史先生

 この後、記念講演として著名な2人の研究者が登壇しました。大阪大学蛋白質研究所栄誉教授、関口清俊先生は「細胞培養における足場(細胞外マトリックス)の重要性」について解説。細胞外マトリックスは、細胞の外周に形成される繊維状・網目状の物質で、細胞の増殖・分化・形質発現を制御する重要な情報が書き込まれています。この部分から細胞死を回避したり、細胞の増殖・分化をコントロールしたりするシグナルが伝達されます。

 関口先生らは、細胞外マトリックスの「基底膜」といわれる部分を構成する多数のタンパク質の中でもラミニン511というタイプに注目し、研究してきました。すでにラミニン511断片と同じ配列の組み換えタンパク質が製品化されています。これがヒト多能性幹細胞(ES細胞やiPS細胞)の最も有効な足場となり、細胞培養が簡単にできるようになりました。臨床試験用のドパミン神経細胞(パーキンソン病に関与)や角膜上皮細胞(角膜上皮幹細胞疲弊症に関与)などの培養・製造に使用されているそうです。

 続いて大阪大学理事・副学長の金田安史(元大阪大学大学院医学系研究科長・医学部長)は、「未来医療~ウイルス療法の開発状況~」のテーマで講演しました。金田先生は、2年前の2022年7月に放送されたNHKクローズアップ現代「ウイルスの力を 病気を治す力へ ~がん・難病治療の新戦略~」で、スタジオトークのゲストとして出演したこともあります。「治らないと言われていた難病を寛解(かんかい)まで導くことが出来る、これがウイルスの力なのです」と語りました。

 金田先生は癌治療についても言及しました。HVJ-E(センダイウイルスといわれるウイルスの不活性化粒子)に、癌を抑え込む免疫細胞の活性化や、正常細胞には影響せず癌細胞だけを選択的に細胞死に導く作用があることを発見。これらがHVJ-Eに含まれるRNAによっておこることがわかりました。こうした研究をベースに治験をすすめ、メラノーマや悪性胸膜中皮腫、前立腺癌などの癌治療薬としての国内承認、さらには製薬企業との提携によるグローバル開発、適用拡大を目指します。

「iPS細胞を用いて再生医療における新しい研究に挑戦」 目加田英輔所長(大阪大学名誉教授)

 最後に滋慶中之島センターの目加田英輔所長(大阪大学名誉教授)が、今後の活動と目標について説明しました。「再生医療・未来医療に資する基礎研究・開発研究」として、iPS細胞の分化誘導、維持、大量培養に関する研究/神経免疫連関を介した新規鎮痛薬の創発研究/アレルギー、自己免疫疾患の根治を目指した創薬研究などの項目を挙げました。

 そして、センターに所属する和中明生教授(奈良県立医科大学名誉教授)、今本尚子教授(理化学研究所名誉研究員)、榊原修平准教授の3人の研究者のすぐれた業績を紹介し、自身が研究をしてきた細胞増殖因子についても言及。「細胞増殖因子は単に細胞の増殖や運動を促進するだけではありません。卵から親になるまでの生物の発生過程や、傷の修復の過程に重要な役割を果たしています。人の身体の組織を構成する細胞の中でも、神経や心筋組織は長期間死なずに生き続けます。細胞が生き続けるためにも細胞増殖因子は重要な働きをしているのです」と説明しました。

 目加田所長は、人の身体の形成や機能の維持に不可欠なHB-EGFという増殖因子の働きを調べるため研究を続け、マウスを使った実験で心筋細胞の分化や維持に必要な因子であることを見出したそうです。「このセンターで、IPS細胞を用いて、HB-EGFが人の心筋の形成や維持にどのようにかかわっているかを明らかにするとともに、心筋細胞の長期培養などを行いながら、再生医療における新しい研究にチャレンジしたいと考えています」と抱負を語りました。

「生命科学の専門性と医療安全の知識を併せ持つ人材を育成」

 さらに今後の教育・人材育成についても言及しました。大学院教育では、入学者として4年制大学卒業者、生命科学について学び直しを望む医療系社会人、大学卒と同等の資格を持つ専門学校卒業生などを想定。「センターでは生命科学の専門性と同時に、医療管理学の知識を併せ持つ人材として育成し、卒業後は大学などの研究機関、製薬企業、スタートアップ、薬事を扱う行政などの中核的存在として活躍できる人材の育成を目指します」と述べました。

 また社会貢献についても述べ、一般向け・専門家向けのセミナーを定期的に開催。再生医療・未来医療に関する講座をはじめ、高校教員向けのセミナーや中学・高校生を対象にした実験を中心とした体験授業の開催を予定していることを明らかにしました。

「未来医療に重要なのは人材育成。お手本は滋慶学園です」 澤芳樹理事長

 この後の懇親会では、中之島クロスの澤芳樹理事長(大阪大学名誉教授)が「未来医療の発展にとって重要なのは人材育成。そのお手本は滋慶学園グループにあります。このセンターで多くの人を育てながら中之島クロスとともに発展していくことを心より祈念いたします」と祝辞を述べました。参加者同士が情報交換したり、一緒にセンター見学に行ったりする場面も見られました。

(Web広報センター)