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若者と信頼関係を築くには? 学校でも企業でも「寄り添う」ことが大切! 放送芸術学院専門学校卒業生の放送作家・村瀬健さんが講演

大勢の校長先生たちを前に講演する村瀬さん

大阪府高等学校芸術文化連盟の令和元年度の総会が6月5日(水)、大阪市北区天満橋の放送芸術学院専門学校(BAC)で行われ、同校卒業生で放送作家・漫才作家の村瀬健さんが「若者と信頼関係を築くためのコミュニケーション術」と題し、特別講演を行いました。村瀬さんは「面白い」を意識したエンターテインメント型の講演スタイル。教育現場で「生徒とのコミュニケーション」「信頼関係の構築」は避けては通れないテーマだけに、集まった校長先生らは真剣な眼差しで、そして楽しく聞いていました。 

 村瀬さんは関西大学を卒業後、BACで2年間学びました。「爆笑レッドカーペット」「エンタの神様」など多くのテレビやラジオの構成に参加しています。指導した芸人は2000人以上。長年付き合ってきた芸人たちの「話術」「世渡り術」を元にコミュニケーションに関する講演活動も行っており、「最強のコミュニケーション ツッコミ術」(祥伝社新書)などの著書があります。初めての小説「噺家ものがたり」は第24回電撃小説大賞で奨励賞に輝き、昨年出版されました。

 講演で村瀬さんは、まず現代の若者について、①打たれ弱い②人間に興味がない―という特徴を挙げ、「スマホさえあれば楽しめるから、恋愛・友達は必要ないと思っていて、昔の若者のようにガツガツしたところがない」と指摘。「こういう子に、ああしろ、こうしろと指示し、命令しても何も変わりません。校長先生や担任の先生が自ら意識を変えるしかなく、組織のリーダーが変わることで若者が変わっていくという形が一番いいのです」と強調しました。

 村瀬さんがある高校に行ったとき、正門に入ったとたん生徒1人ひとりから「お早うございます!」と挨拶され、寝転んでストレッチをしていた陸上部の生徒たちも立ち上がって背筋を伸ばし「お早うございます!」。村瀬さんは感動したそうです。先生に聞くと、まず校長先生が毎朝正門に立って挨拶し、駅から学校までの道に何人もの先生が立ち、生徒に「お早う!」と挨拶しているというのです。

 「これを毎日続けると、さすがに生徒も『先生が雨の日も挨拶しているのに挨拶しないわけにはいかんやろ』となります。つまり挨拶を押し付けるのではなく、まず先生方が変わることで若い人を変えるというスキームで人間関係をつくってほしいのです」

誰でも信頼している人の言うことしか聞かない!?

 村瀬さんは、若者と信頼関係を築くための人間関係の鉄則の1つ目として、価値観の違いを受け入れるということを挙げました。会場の先生たちにコップの絵を描いてもらったうえで、「ガラスのコップ、中に水が入ったコップ、紙コップ、コーヒーカップ…。人によって色んなコップを描きます。中にはコップの底を描く人もいます。同じコップでも人によって受け止め方が違います」と語りました。全員の価値観をそろえるのは不可能で、「これはおかしいやろ!」「違うやろ!」と、イライラしていたら生きづらい。「人の価値観は変わらないので、ある程度は仕方がない」と割り切る覚悟が必要だと説きました。

 人間関係の鉄則として、村瀬さんが2つ目に挙げたのは、人は信頼できる人の言うことしか聞かないということ。嫌いな上司から酒席で人生論を聞かされても聞く気にならないことや、逆に信頼している人に意見を言われると、それが正解に聞こえることを例に挙げながら、これこそが「信頼の力」だと言いました。そして「すべての人間関係は信頼が基本。どうしたら信頼関係が築けるのかという1点に絞って、生徒との関係をつくってほしいのです」と語りました。

【人間関係の鉄則①】価値観の違いを受け入れる。
【人間関係の鉄則②】人は信頼できる人の言うことしか聞かない。

 そのためには具体的にどうすればいいのか、3段階のステップごとに“村瀬流”のコミュニケーション術を説明していきました。

ちゃんと見ているよ、というメッセージを送り続けることが重要

 最初のステップは、「生徒を見る」ということです。自分を見てくれていない人に何を言われても響かないし、ちゃんと普段から見てくれている人に褒められるとすごく嬉しいものです。村瀬さんは誰しもが感じることに触れつつ、普段から生徒を見てあげることの大切さを強調しました。

  • 見ていることを伝えることが重要

  • 長所を見つけて褒めてあげよう!

 「学校の生徒を見ることが目的ではなく、見ていることを伝えることが目的なのです。普段からちゃんと見ているぞ!ということを相手にわかってもらわないと意味がないんです!」と村瀬さん。人間関係は挨拶がすべてで、いい挨拶は人に好かれやすいし、あなたのことを見て知っているよ、と伝えるためにも「○○さん、お早う」と名前を入れて挨拶することや、相手のところへ行って話しかけること、会話の中で名前を連呼することなど、6つの大切な行動を挙げました。

【ステップ①】私は、普段からあなたのことをきちんと見ていますよ、というメッセージを送り続ける。

名前を呼んで、あいさつをする。
■暇ができたら、自分から相手のところへ行って話しかける。
■会話をしながら、相手の名前を連呼する。
■会話をしながら、相手の個人的なことに触れる。
■結果に至るまでの過程をきちんと見て、そのことを言葉にして伝える。
■相手の長所を見つけて、伝えてあげる。

話を聞いているよ、と伝える! 明石家さんまさんの聞き方は…

 次のステップは会話の極意です。相手の話をちゃんと聞かない先生は絶対に信頼されないし、その一方で人の話をちゃんと聞ける人はとても信頼されます。村瀬さんは「話を聞くだけではなく、話を聞いていますよ、ということを相手にしっかり伝えることが重要だ」と語りました。

 テレビのトーク番組の司会者、明石家さんまさん、くりぃむしちゅー上田晋也さん、今田耕司さんは、とにかく聞き上手。しかも聞いていますよと伝える術に長けています。だからこの3人が司会をしている番組のゲストは全員、彼らを好きになって帰るそうです。明石家さんまさんの場合、話を聞く態度を見ると、必ず目を見てうなずきながら「おっ、そうか」「なるほど」「そら、大変やったな」とあいづちの種類を全部変えていることがわかります。

  • あいづちの種類を変えて話を聞く

  • 絶対に守ってほしいこと!

 目を合わせる、うなずく、言葉を返す―この3つのうち、どの1つが欠けても相手に不快感を与えることを、村瀬さんは力説しました。

【ステップ②】話をよく聞いている、ということを相手に伝える。

■相手のを、じっと見る。
■相手の話に、うなずく。共感しなくても、ひとまず、うなずいてあげる。
■相手の話に、あいづちを打ち、あいづちの種類を変えていく。
■話を聞きながら、適度に質問を入れる。
■相手と言葉が重なったら、相手に譲ってあげる。

肯定的に接してあげる! 常に笑ってツッコミを入れる鶴瓶さん

 最後のステップは、相手に対して肯定的な態度で接するということです。高校を中退する生徒は多くの場合、どこに行っても否定され、行き場がないということが辞める理由の1つといいます。「せめて学校が自分を肯定してくれる居場所になってくれたら、辞めないでしょう」と村瀬さん。若者と接する場合、仮に技術が上手でなくても、いきなり「お前、下手やな!」と言う必要はないし、間違ったことを言ってもピシャリと否定しなくてもいい場合もあるというのです。

 そのためのポイントとして、笑顔をたくさん見せることや、常に気づかいを忘れないこと、結果を出したら必ず褒めてあげることなどを挙げました。「誰とでも常に肯定的に接しているのが笑福亭鶴瓶さん。相手がおかしなことを言うと『なに言うとんねん』とツッコミますが、常に笑いながら、相手のダメージを考えています。だから、みんな鶴瓶さんのことが好きになるのです」と語ると、会場の皆さんもうなずいていました。

【ステップ③】相手に対して、肯定的に接してあげる。

■相手の前で、笑顔の量を増やす。
■相手を、気遣ってあげる。
■結果を出したら、ほめてあげる。
■落ち込んでいる相手には、自分の失敗談を語る。
■(自分が)間違ったことをしたら、きちんと謝罪する。
■(相手が)絶対にしてはいけないことをしたら、死ぬほど否定する。

 見てあげる、聞いてあげる、肯定してあげる―という信頼関係を築くための3つの行動を、一言で言うと「寄り添う」ことだそうです。村瀬さんは「生徒に信頼されて尊敬される先生は、寄り添っています。企業においても若い社員に慕われる上司、経営者は社員に寄り添っているのです」と締めくくりました。