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神戸・甲陽音楽&ダンス専門学校の卒業生 ベーシストの卯野さんにバークリー音楽大学への浮舟奨学金

シンプソン氏から盾を受け取った卯野さん(右)

 ジャズやロックなどアメリカ現代音楽の名門、バークリー音楽大学(米国・ボストン)と滋慶学園グループとで創設した「浮舟奨学金」の授与式が4月18日(木)、大阪市中央区の大阪城ホール・コンベンションホールで行われました。今年の受賞者は、神戸・甲陽音楽&ダンス専門学校(神戸市中央区)留学科・ベース専攻を卒業したばかりの、卯野真丈(まさたけ)さんです。バークリー音楽大学の筆頭副学長で学術部門最高責任者のラリー・シンプソン氏から、奨学金目録と記念の盾を受け取り、大きく夢を膨らませていました。

 この奨学金制度は2016年に創設されました。バークリー音楽大学に編入学のかたちで留学し、最短2年で同大学を卒業するという教育プログラムで、滋慶学園グループの音楽系の学校で最も優秀な学生1名に対し、2年間の学費に相当する奨学金が授与されます。
 4人目の奨学生となる卯野さんは、5歳からピアノを習い、中学生のころ、1950~60年代のロックンロールなどの影響を受け、エレキベースを始めました。家の近くにある甲陽音楽学院(神戸・甲陽音楽&ダンス専門学校の前身)に中学3年から通って勉強。高校に入ってからもダブルスクールで通い、ジャズ音楽の基礎とウッドベースの奏法を学びました。

若きアーティストの夢の支援に感謝  バークリー筆頭副学長、シンプソン氏

 授与式はバークリー音楽大学出身で、神戸・甲陽音楽&ダンス専門学校の海外部副部長、岡居啓介先生による英語の司会で進行。シンプソン副学長はスピーチで、バークリーで学ぶ最初の日本人として、1956年に入学したニューヨーク在住のジャズピアニスト、秋吉敏子さんを、「大勢の日本人ミュージシャンにバークリーの扉を開いた人」として紹介しました。秋吉さんがアメリカのジャズミュージシャンに与えられる最高の賞「ジャズマイスター賞」の受賞者であることに、「心が躍りうれしく思います」と語り、日本とのかかわりの深さを強調しました。
 そのうえで浮舟奨学金について、「バークリーで深く感謝されており、若きアーティストの夢の支援に対する浮舟総長の寛大さと熱意ある取り組みに、心から御礼を申し上げます。今年の受賞者の卯野さんも、この卓越した伝統を受け継いでいます。彼の動画を見聞きして、技術の優秀さと音楽性について、極めて強い感銘を受けました。彼のキャリアがバークリーでも、将来的にも満開に花を開く様子を目にするのを楽しみにしています」と期待感をこめて語りました。

  • 奨学金制度に感謝をするシンプソン副学長

  • 英語でスピーチをする卯野真丈さん

元気づけることができる音楽家になるのが目標  受賞者の卯野さん

 英語でスピーチをした卯野さんは、「親身にサポートしてくださった先生方、そして何より音楽という険しい道を進むことを認め、援助してくれた家族に心から感謝します。バークリーに行くことは、1つの大きなターニングポイントです。そこで終わりでなく、これからどうしていくかが重要です」と語り、①誰かがつらい時に音楽によって寄り添い、元気づけることができる音楽家になること②ジャズを再び大衆に受け入れられる音楽にすること③音楽の存在意義を見つけること―の3点をこれからの目標としてあげました。
 そして「この3つを大きな目標として、バークリーで学んでいきたいと考えています。感謝のこころを忘れることなく精進します」と語りました。

バークリーで学ぶ先輩たちが激励のメッセージ

 今回の授与式には、浮舟奨学金によってバークリーで学んでいる先輩の第1回奨学生、齊藤大陽さん(ベース)と、第3回の赤岩秀美さん(ピアノ)も出席し、卯野さんへの激励のメッセージを贈りました。齊藤さんは、「バークリーには世界一のすばらしい音楽の環境があります。同じ夢を持った仲間たちと共に過ごす時間によって、さまざまなインスピレーションも生まれるでしょうし、人生がガラっと変わってしまうような経験もできると思います。バークリーでは、何事に対しても貪欲であり続けること、そして常にオープンマインドであり続けることが大切です」とアドバイスをしました。

  • 「人生が変わってしまう経験も」と語る齊藤さん

  • 赤岩さんは「悩む時は夢の再確認を」

 また、赤岩さんは「ちょうど一年前に受賞者としてスピーチをしました。時間が経つのがとても早いことに驚いています。この留学の機会が与えられなければ、今のような充実した日々はおくれていませんでした。とても感謝しております。バークリーでは、レベルの高い同級生に囲まれて、フラストレーションをためることや、思い通りにいかず、悩むこともあると思います。しかし、そんな時こそ原点に帰って、自分の心の声に耳を傾け、留学の目的が何だったのか、夢をもう一度再確認して、自分の力で切り拓いていってください」とエールをおくりました。

世界の秀才が集まる場で切磋琢磨を  浮舟総長

 最後に浮舟総長が、「音楽の世界には国境がないといわれ、音楽そのものが言葉だと思います。だからこそバークリーには、世界からすばらしい秀才が集まってくるのでしょう。そこで切磋琢磨した仲間たちとのつながり、人的ネットワークは卯野さんの生涯の財産になっていくと思います。何事にも好奇心をもって、積極的に取り組んでいただきたいと思います。アメリカのさまざまな価値観、文化、伝統についても是非、学んでください」と祝辞を述べました。

  • 「切磋琢磨した仲間とのつながり大切に」と述べる浮舟総長

  • バークリー卒業生の先生も一緒に。左から岡居先生、ジェイソン・カメリオ副学長補、シンプソン副学長、赤岩さん、卯野さん、齊藤さん、浮舟総長、池末先生、細川先生

 バークリー音楽大学はボストンを本拠地とし、1945年に創設。ジャズやロックなど現代音楽の総合大学として、多くのグラミー賞受賞者を輩出するアメリカ音楽界の名門校。卒業生にはニューヨーク在住の秋吉敏子さんのほか、サックスプレーヤーの渡辺貞夫さん、ジャズピアニストの小曽根真さんら錚々たるミュー ジシャンがいます。滋慶学園グループでは名誉教育顧問のミッキー吉野先生や、ゴスペルアンサンブルの指導をしている副校長の池末信先生、神戸・甲陽音楽&ダンス専門学校副校長の細川直之先生や岡居啓介先生が同大学出身です。